発展編

第7章 未来型の働き方を目指して


3 「情報化社会の働き方としての在宅ワーク」



日本労働研究機構
神谷 隆之

在宅ワーク調査と研究に取り組み始めた契機と経過

 1993年に、当時の英国の雇用相と日本の労働大臣が会談した際に、英国側から「わが国ではテレワークの進展に強い関心を持っている。コンピュータが発展した日本ではテレワークも進んできていると思う。両国でそれをテーマに会議を行おう」という提案がなされ、95年秋の開催が計画されました。
 その会議のため、わが国の在宅勤務や在宅ワークなどのテレワーク全般の状況を調査する仕事が労働省から日本労働研究機構(JIL)に依頼され、その担当者として初めてテレワーク調査に取り組んだのがそもそものきっかけです。
 思ったほど普及は進んでいなかったこと、調査対象にアプローチする手法に工夫が足りなかったことなど、その調査自体はあまりうまくいきませんでした。しかし、その結果に関心を持っていただいたことがきっかけで、ニフティの在宅ワーキングフォーラムと連携を図ることができ、97年以降継続的に、在宅ワークに焦点を当ててインターネット上で調査を行うなど、効果的な実態把握が行えるようになりました。
 並行的に、労働省女性局からの委託で在宅ワーカーだけでなく発注事業所も含めた調査(97年)を行ったり、JIL独自で在宅ワーカーの登録会社のヒアリング調査(99年)を行ったりしました。

調査の結果、見えてきたもの

 在宅ワークというと、育児期の女性が働き易いなど、まず「働く場所」の問題として考えられます。そのことも重要なポイントですが、より本質的な側面は正社員やパートなどと異なり、雇われないで働くという点にあると思えます。SOHOという新しい言葉も生まれてきているように、情報化に伴い新しい職種分野で新しいタイプの自営業的な働き方が生まれつつあるといえます。
 また女性にとって特徴的な点は、結婚前、結婚、出産育児、子育て後といった長いライフステージの中で、在宅ワークが育児期の一時的な働き方としてしか位置付けられていない面があります。これは、女性が長期にわたって自分の職業能力を高めていくことの重要性から見れば残念な側面です。

今後、社会整備として必要なこと

 製造業や商業などの自営業には様々な支援措置が講じられてきていますが、在宅ワークという情報サービス分野の新しい自営業に関して蚊帳の外に置かれている感があります。また、各種の社会保障制度に関しては、雇用労働者の方に手厚い取り扱いが行われている傾向にもあります。働き方の選択によって違いが大きくならないようにする必要があり、さらに、自分自身での能力開発が行いやすい環境を整備していく必要があります。
 なお、女性が企業に勤め続け易いように、企業が育児期のための在宅勤務制度を導入していくことも重要です。

今後、在宅ワークはどうなっていくか

 調査を始めた5年前に比べれば、在宅ワークはかなり広がってきていると感じられます。この背景には、基本的に、IT革命の進展と新しい情報サービス職種の増加が挙げられますが、同時に「企業」、「職業」と「労働者」の三者の関係の変化も挙げられます。
 従来型の労働者は「企業」との強い関係を求めていましたが、在宅ワーカーは自分の選んだ「職業」との関係を重視しているといえます。厳しい経営環境の中で、企業組織は大きく変化しており、社員を丸抱えするのではなく、その専門的な職業能力を求めているといえます。雇用の関係を離れて企業との契約により在宅ワークを行っていく者が増えるとともに、雇用を続けながらも報酬は成果主義で支払われる在宅ワーカー的な社員が生まれてくることも考えられるのではないでしょうか。



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