実践編・自己診断から実施へ

第5章 ワンポイント知識


2 経理の知識



 さて、会社勤務時代は、所得税、住民税が給料から天引きされていたので、何も疑問を持たずに給料明細書を見ていた方も多かったのではないでしょうか。ところが在宅ワークを始めたら、自分で税金の申告をしなければなりません。また、見積書や請求書といった仕事に必要不可欠な書類も、作らなければならないのです。

経費について

 在宅ワーカーは、個人の所得に課される「所得税」と「都道府県民税」や「市町村税」などの「住民税」を納税する必要があります。税務署には所得税の申告(確定申告)をしますが、住民税については税務署から居住地域の市町村役場に連絡がいくので、申告の必要はありません。

 所得税法では、「所得」を事業所得、給与所得等の10種の類型に区分していますが、在宅ワーカーについては、それが事業として行っている場合は事業所得に、内職的に行っている場合は雑所得に分類され、必要経費が認められます。
 この場合の「所得」とは「収入」という意味ではなく、「総収入金額−必要経費」の額です。必要経費が多くなれば、所得は少なくなり、したがって納税額も少なくなります。

 必要経費とは、その年の収入を得るために必要だったもの(販売費、一般管理費など)を指します。具体的には、次のような勘定科目に分けられます。
(1)  租税公課
 印紙代、事業税、固定資産税、自動車税、自動車取得税、自動車重量税などの事業用使用部分。ただし、所得税、住民税、罰金などは必要経費にはならない。
(2)  荷造運賃
 原稿の受渡しや納品時の成果物を発送する際に必要な、包装材料費や宅急便代など。
(3)  水道光熱費
 水道、電気、ガス、石油代など事業用に使用した費用。
(4)  地代家賃
 事業用に使用した家賃、駐車場代など。
(5)  旅費交通費
 打ち合わせなどで使用した電車、バス代など。
(6)  通信費
 事業用に使用したハガキ代、切手代、電話代、FAX代、パソコン通信費など。
(7)  広告宣伝費
 開業通知や事業広告の掲載料、版下料、印刷料、折込料金など。
(8)  接待交際費
 事業に必要な得意先への贈答品、菓子代、飲食接待代など。
(9)  修繕費
 事業に必要な建物、車両、OA機器、設備などの修理費。
(10)  消耗品費
 事業用に使用した文房具、電池、フィルム、FDやMO、CD-R代、封筒、コピー用紙代など。
(11)  図書費
 事業に必要な新聞、雑誌、書籍などの購入費。
(12)  外注費
 外部の個人や業者に発注した仕事の対価。
(13)  研修費
 事業に必要な研修会、講習会などの受講料やテキスト代など。
(14)  リース料
 事業用にリースで借りているコピー機、FAX機、OA機器など。
(15)  減価償却費
 10万円以上で購入したパソコンなどの事業用資産の償却費。
(16)  雑費
 上記に当てはまらない事業に必要な必要経費。

これらを申告するためには、支出を証明できる帳簿や領収書等が必要です。

※特定情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)
http://www.mpt.go.jp/top/zeisei/soho-2000apr.html
個人事業者及び法人が取得する100万円未満のパソコン等の特定の情報通信機器について、取得価額の全額を損金算入(必要経費処理)することができます。パソコン減税の適用期間は1年間延長されました。
【対象税目】 所得税・法人税
【対象者】個人事業者及び法人で青色申告書を提出するもの
【適用期間】平成11年4月1日から平成13年3月31日

必要経費に関する所得税法上の取扱い

 家内労働法第2条第2項に規定する家内労働者、外交員、集金人、電力量計の検針人など「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者」※1)の事業 所得又は雑所得の所得金額の計算については、その総収入金額から控除する必要経費が65万円未満となるときは、実際の必要経費がなくても、最低65万円まで(給与所得を有する 場合には、65万円から給与所得控除額を控除した残額を限度)の必要経費の控除が認められています。

 在宅ワーカーについても「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者」に該当する場合には、家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例が適用されます。したがってこれに該当する在宅ワーカーの場合、必要経費が実際にない場合でも65万円の必要経費が認められるため、基礎控除の38万円を加え、年収が103万円までは、非課税となり、確定申告の必要はないということになります。

 必要経費がある場合でその額が65万円に満たない場合、必要経費を除いた年収が65万円から必要経費を控除した額に基礎控除の38万円を加えた額以下であれば、同じく非課税で確定申告の必要はないということになります。

例:必要経費が40万円の場合
(必要経費を除いた収入が(65万円ー40万円)+38万円=63万円以下なら非課税)

 必要経費がある場合でその額が65万円に満たない場合、必要経費を除いた年収が65万円から必要経費を控除した額に基礎控除の38万円を加えた額以下であれば、同じく非課税で確定申告の必要はないということになります。

例:必要経費が80万円の場合
(必要経費を除いた収入が38万円以下なら非課税)


 総収入から必要経費を差し引いた額が基礎控除の額以下の時は非課税となり、確定申告の必要はないということになります。このほかに生命保険料を支払っている場合等の控除もあります。それらの内容については、お近くの税務署にお尋ねください。

[確定申告について]

  確定申告とは、一言で言うと「納税者自身が1年間の所得の金額を計算し、確定申告書を提出する手続き」のことです。居住地域の所轄の税務署長にその年の1月1日から12月31日までの所得金額を翌年2月16日から3月15日までに申告します。
 確定申告書は白色申告用と青色申告用の2種類があります。白色申告用は白色申告者が使用しますが、原則として、その申告に係る年分の前々年の所得金額が300万円を超える場合は領収書等を整理保存し、帳簿を付ける義務があります。

  一方、青色申告用は青色申告者が使用しますが、青色申告者はすべて必要な項目を帳簿に記載する義務があります。一見、青色申告のほうが面倒なように思えますが、いろいろな特典があります。青色申告をするためには、その年(=課税対象となる年、すなわち申告手続を行う年の前年、以下同じ)の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。ただし、その年の1月16日以後に新たに開業した人は、開業の日から2ヶ月以内に申請すればよいことになっています。以下は青色申告の主な特典です。

<青色申告の主な特典>

(1)  青色申告特別控除
  平成12年分の確定申告から55万円の特別控除を受けるためには、確定申告書にいわゆる(※2複式簿記による記帳及び貸借対照表、損益計算書等の添付が必要となるが、(※3平成14年までの特例として、簡易な簿記の方法であっても、所定の帳簿書類等に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を添付すれば、45万円の控除を受けることができる。これ以外は10万円の特別控除が認められている。

(2)  純損失の繰越しと繰戻し
 必要経費が総収入金額を上回った場合、損失額を翌年以降3年間にわたって各年分の所得から差し引くことができる。また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて損失額を前年の所得から差し引き、前年分の所得税の還付を受けることもできる。

(3)  事業専従者の給与の全額経費計上
 15歳以上の生計を同じくする親族や配偶者の給与を、その仕事の内容や従事の程度から見て相当である金額は全額、経費として計上できる。ただし、この規定の適用を受ける場合には届出が必要であり、その届出た金額の範囲内で必要経費となる。

[配偶者控除と配偶者特別控除について]

 配偶者(夫)が働いている場合は、妻の(※4合計所得金額に応じて配偶者は「配偶者控除」と「配偶者特別控除」が受けられます(夫と妻の立場が逆の場合も同様です)。

(1)  配偶者控除
 妻の年間の合計所得金額が38万円以下であれば、夫は所得税、住民税の配偶者控除が受けられる。

(2)  配偶者特別控除
 妻の年間の合計所得金額が次のイまたはロに当たる場合で、控除を受ける年の夫の年間の合計所得金額が1,000万円以下であれば、妻の年間の合計所得金額に応じて、夫は所得税、住民税の配偶者特別控除を受けられる。
 イ 控除対象配偶者に当たる場合は38万円未満
 ロ 控除対象配偶者に当たらない場合は76万円未満

 「青色申告会」という青色申告者の民間団体が税務署ごとにあり、ここでは記帳や決算書の指導、金融経営の相談などをしています。会員制をとっており、会員になると自分で記帳をしていく中で分からないことがあれば、指導をしてくれますので、活用するのも一考です。

 税務相談の定型的なものには、音声、またはFAXで自動的に情報が引き出せる「タックスアンサー」というサービスがあります。以下はその問い合わせ先ですので、活用してみるのもいいでしょう。

<タックスアンサー一覧>
地 域 TEL
札 幌 011-271-8855
青 森 017-734-2299
盛 岡 019-626-2299
仙 台 022-263-2299
秋 田 018-832-7733
山 形 0236-42-2299
郡 山 024-923-2299
水 戸 029-228-4488
宇都宮 028-627-7799
前 橋 027-243-3399
大 宮 048-647-7444
千 葉 043-227-7799
東 京 03-3213-2222
横 浜 045-641-2222
新 潟 025-223-2299
富 山 076-442-3377
金 沢 076-224-1144
福 井 0776-24-7766
甲 府 055-227-1177
長 野 026-237-2299
岐 阜 058-264-7799
静 岡 054-252-4444
名古屋 052-961-7799
0592-29-2299
 

 
大 津 077-523-3322
京 都 075-441-6677
大 阪 06-6946-2222
神 戸 078-321-1144
奈 良 0742-23-2299
和歌山 0734-22-6677
鳥 取 0857-27-2299
松 江 0852-24-7799
岡 山 086-221-2222
広 島 082-222-7799
山 口 0839-23-8866
徳 島 0886-54-7799
高 松 0878-62-7799
松 山 089-921-7799
高 知 0888-25-2299
福 岡 092-475-2222
佐 賀 0952-25-7799
長 崎 0958-27-2299
熊 本 096-326-2222
大 分 097-537-7799
宮 崎 0985-32-7799
鹿児島 099-225-8833
那 覇 098-864-0022

 また、タックスアンサーにはインターネット版もあり、情報の検索や、申告書等のダウ ンロードができます。
<アドレス> http://www.taxanswer.nta.go.jp/

 ※1「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者」という場合の「特定の者」は必ずしも単数の者をいうのではなく、人的役務の提供先が特定している限り複数の者であっても差し支えない。人的役務の提供先を広く募るなど、その業務の性質上、不特定の者を対象として人的役務の提供をする場合における人的役務の提供先は「特定の者」に当たらない。

 ※2複式簿記−−−日々の取引を所定の勘定科目に従って借方(入金)、貸方(出金)に仕訳することで、資産、負債、資本を把握する記帳方法。

 ※3平成14年度までの特例−−−平成14年度までの各年分は、簡易帳簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳)に日々の収入支出を継続して記帳している人で、預金や手形、借入金などの資産や負債について預金通帳や借入証書、残高証明書などの記録から、年末残高を確認し、貸借対照表を作成すれば控除の対象となる。

 ※4合計所得金額--------純損失等の繰越控除をしないで計算した場合の、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をいう。

見積書を作ろう

 「見積り」とは、仕事に対してどの程度の時間と工数、それに適応する料金がかかったかを相手に提示するものです。時には、相手から「○○円でお願いします」と言われる場合もあります。それが妥当な金額だったらいいのですが、法外に安い金額だったらどうしたらいいでしょう。大抵の在宅ワーカーは「経験が浅いから」「次の仕事が来ないと困るから」ということで、「分かりました。それでやります」と即答してしまうのではないでしょうか。そういう場合は、「分かりました。一度、きちんと作業時間と工数を割り出してお見積書を出させていただきます」とワンクッション置いてから答えましょう。あまり安い値段で仕事を引き受けてしまったら、それ以降も同じような値段で受けざるを得ません。どんなに頑張っても1時間200円、300円にしかならない仕事なら、パソコン代や電気代、通信費を考えたら、引き受けないほうがいいですし、そのような発注をしてくる企業は、まともな価格提示をしていないところと注意したほうがいいでしょう。

  また、「高すぎる」と相手から言われた場合は、どこで接点を見出せるかが交渉のテクニックです。自分にとって一定の金額は割らない、というところは持って交渉に臨みましょう。
  見積書は発注側、受注側にとって、「この金額で合意した」という証になりますので、請求書発行時まで、大切に保管しておきましょう。
例 御見積書

請求書を作ろう

 さて、仕事を受注する際に作成するのが「見積書」で、条件的・金額的に合意して相手から発行されるのが、「発注書」です。そして成果物を納品した時に自分が発行し相手の確認を得るのが「納品書」です。この一連の流れを経ていよいよ相手に「請求書」を発行します。

 請求書の発行時に注意することは、必ず相手の締め日を確認することです。各社で取り決められている「支払サイト」というのが必ずあります。「20日締めの翌月末払」などというのが、その取り決めサイトの一例です。例えば納品日が9月18日だったのに、20日締めということを知らずに請求書の発行日を9月30日にしてしまった場合は、当月付けの扱いに該当せず、翌月付けの扱いになってしまいます。結果、入金されるのが、納品時から換算すると、翌々月末払となってしまうのです。

 また、基本的に請求書には見積書と同額を提示しますが、受注時と納品時では条件が変わってしまっていたり、作業行程が著しく増えて、見積書の価格から大きく変わる場合は、請求書を発行する前にあらかじめ相手に金額が変わる根拠を説明をしておきましょう。何の説明もなしに見積書とまったく異なる請求書が相手に届いた場合は、受け付けられない場合もあるので、注意しましょう。
例 御請求書



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