実践編・自己診断から実施へ 第3章 在宅ワークを始めるための自己診断 1 自分にとって「在宅ワークとは何か」を明確にする なぜ在宅ワークをしたいのか 在宅ワークの特性は、「在宅」と「非雇用」が大きく、自宅を中心として、自由に働く時間を設定し、業務遂行ができることです。従来の会社勤務は、「特定の就業場所へ出かける・時間を拘束される」、「雇用形態をとる」という特徴があり、これは在宅ワークの対極にあります。 JIL調査によると、在宅ワーカーは、女性が7割を占め、しかも出勤することが難しい30歳代の育児期の女性が中心となっています。 女性の年齢別にみた労働力率(労働力人口/15歳以上人口)は、「M字型」とたとえられます。20歳代前半で山を描き、その後、20歳代後半から30歳代前半にかけて落ち込み、谷間となります。その後30歳代後半には再び上昇。40歳代で再び山となり、年齢とともに再度低下します。この労働力率が落ち込む「谷間の世代」が、在宅ワーカーの多数を占めています。 女性のライフステージからみると、結婚・出産・育児にあたる年齢層で、この出産・育児・家事のために多くの女性がいったん働くことから離れています。年齢別の労働力率は欧米諸国では、緩やかな台形を描いている国が多いのに対して、日本ではいったん低下するのは、従来、女性は結婚または出産したら退職するというのが、一般的であったことや、継続して就労するための環境が整っていなかったことを反映しています。 ここに登場したのが、「在宅ワーク」という新しいワークスタイルです。今まで女性は出産・育児期を迎えると「仕事か家庭か」という二者択一を迫られるのが常でした。この時期、女性は仕事と家庭との両立のために常勤からパート勤務に移り、パート勤務でも働くことが難しい場合は、仕事から離れざるを得ないという人が、大半を占めていました。ところが「在宅ワーク」というワークスタイルの登場によって、働き方の選択肢が広がったのです。 その時期に常勤で働くには、「子どもを保育園に預ける」という選択をしなければなりません。0歳・1歳児においては慢性的に保育園の空きが少なく、待機を余儀なくさせられる場合も少なくありません。さらに、勤務先に育児休業の前例がない、などで居心地の悪さを感じるなど、育児と仕事を両立させるための様々な障壁が立ちはだかっています。 そこで次の選択肢は短時間で働くというパート勤務です。しかし、たとえ就業時間が短くても、定期的に出勤して働くという点では、パート勤務もまた、時間や場所に拘束された働き方といえます。 そこで、よりフレキシブルに働く場所や時間を選択したい人、あるいは、特別な事情でどうしても家を空けられない人にとっては、在宅ワークは、より魅力的な働き方といえるでしょう。 しかし、在宅ワークは決していいことづくめではありません。在宅ワークは、「在宅」であると同時に「雇用されない」働き方であることから、毎月安定した収入を得られる保証はありませんし、自分から努力をしなければ、新しい知識や仕事のやり方を学んだり、人脈を広げていく機会も少なくなってしまうでしょう。また、仕事と家庭生活を同じ場所で行うため、時間的にも場所的にも両者の境界があいまいになったり、自己管理が難しくなることも考えられます。 もし自己管理や自主的なスキルアップに自信がなければ、まずパートや派遣に出る、という選択肢もあります。他の働き方に比べた場合の在宅ワークのメリット・デメリットを両方理解した上で、なぜ自分は在宅ワークを選択したいのかを、よく考えてみることが大切です。 職業生活の中での中・長期的な位置付け 在宅ワークを選択したときに、自分の職業生活の中でどんな位置付けになるかも確認していきましょう。例えば、そのまま在宅ワークを続けるのか、フリーランスとして自活するのか、さらに発展させて起業に至るのか、または再就職のための1つの過程なのか。 では、ここでキャリア形成上の位置付けについての意見を紹介します。 ◎的野優貴子さん (34歳。夫と2人家族。福岡県大野城市在住。在宅ワークグループ「あまらんすねっと」主宰。) 現在、企業・病院のスタッフ研修、職場改善研修や能力開発・学校教育のお手伝い、キャリアカウンセリングを含む個別カウンセリング等を行っています。特に最近は、WEBプロデュースの仕事が多くなってきました。 現在の仕事を選んだ理由としては、自分の資質、能力が活かせるということでしょうか。 OL時代から、異業種交流会などに参加し、人と会うことで自分を高めることが一番の勉強だったと思います。各種セミナーへの参加を始め、現在も、まだまだ勉強中、大学に通っています。 私が今後、在宅ワークを目指す方へアドバイスしたいのは、在宅ワークを行う前に、一度組織で仕事をされることをお勧めします。社会人であることが、大前提だと思うからです。 現在も勉強中だと言う的野さん。会社組織の中で働いている時も、自分を高めるため数々の出会いを求め、その中で在宅ワークに巡り合いました。的野さんは、たとえ在宅で働いていても、一社会人としての意識が非常に高いと言えます。 個人生活の中での位置付け では、ここでもう1つの事例を紹介します。生活と仕事の両立を考えたときに、どう在宅ワークを位置付けてきたかという意見です。 ◎古谷 早百合さん (37歳。夫と2人家族。千葉県在住。現在、在宅ワークのエージェントのチームリーダーを経てフリーライターに。) 3年程前から在宅ワークを始めました。最初は「試しに半年位やってみて、駄目だったら再就職しよう」という軽い気持ちでした。 元々はシステムエンジニアだったのですが、ちょうど30歳の時に病気で出社できなくなったのです。それまでは、仕事漬けの毎日でした。ところが病気を契機に、本当に自分が一番やりたい事は何なのだろうと、真剣に考え始めました。 会社を辞めてからは、もし社会復帰できなかったらどうしようという不安でいっぱいでしたから、すぐに会計事務所に再就職しました。税理士の資格を取って、独立も考えましたが、そのうち、自分には「お金の計算は向いていない」と痛感するようになりました。 そんな時、ある雑誌がきっかけで在宅ワークの存在を知り、「仕事」+「自分のための時間」を両立させようと思ったのが直接の理由でした。 その後、在宅ワーカーのエージェントでチームリーダーをやっていましたが、今年の4月よりフリーライターとなりました。また、8月より月の半分はある出版社の編集部へ、ホームページ制作の担当者として通い始めました。 3年前から在宅ワークをやっていくうちに、自分が一番やりたかった「文字を書く仕事」に思い切って入ることになったのです。 このように古谷さんの場合は、再就職を果たした後、自分の生き方を考えた末、在宅ワークを選択しました。その後、もう一度、自分の「本当にやりたい仕事は何か」を見極め、現在に至っているのです。 ◎菱木 ひろみさん (49歳。高校3年生の女子、夫と3人家族。東京都大田区在住。25年間に及ぶ会社員生活を終えた後、在宅ワークを始め、1年2ヶ月後に個人事業主として起業、その後有限会社アイボールを設立。) 会社員時代は、貿易関係の仕事に携わっていました。海外出張の際、決定権を持って活き活き働く女性経営者の姿に憧れ、いつか自分も起業したいと思っていました。そこで、25年のサラリーウーマン生活に終止符を打ち、まずは個人事業主として、オフィス・アイボールを設立、在宅でホームページのコンテンツ制作の仕事等を勉強をしながら始めました。最初は何から何まで自分でしなければいけないことに、戸惑いました。例えば会社員時代は、パソコンのトラブルがあっても、システム関係の部署の人に頼めば済みました。しかし、在宅ワークはそうはいきません。パソコン環境を一から整えることもすべて自分でやらなければならないということ自体、かなりの負担でした。今年、念願かなって有限会社アイボールとして会社組織にしましたが、正直なところ、現在では家の中に仕事を持ちこむことが苦痛です。やはり、きちんと仕事と家庭生活の区別をつけていきたい。でもそのためには、家賃収入を始め、月々のランニングコストを確実に支払うための収益を上げなければなりません。会社として自立し、在宅ワークから離れることが、現在の私の目標です。 菱木さんの場合は、在宅ワークは自分のキャリア形成の上で、ステップアップをするための1つの過程であり、在宅ワークを超えて働いていくことに目標を定めていることが解ります。 このように在宅ワークは、 (1) アルバイト・パート的にフレキシブルに働く (2) 専門的な技能を身につけてフリーランスで働く (3) 会社組織へするための準備期間として働く (4) 再就職につなげる準備期間として、スキルの維持向上のために働く 等個人のキャリア形成において、それぞれ位置付けが違ってきます。個人個人が将来に向けて人生設計を思い描き、在宅ワークをどう位置付けていくかを考えた上で、選択していきましょう。 |
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