基礎知識編・在宅ワークを知る 第2章 在宅ワークの基礎知識 6 トラブル防止・トラブル対策 契約条件が明確化されていない在宅ワーク JIL調査によると、発注事業所側からみた契約の仕方は、初回でも何らかの「書面」による場合は6割弱にとどまり、「口頭」での場合が約4割を占めます。また、「書面」であっても、「契約書形式」はその半数の約3割で、「伝票形式」(2割)や「メモ程度」(1割弱)が少なくありません。また2回目以降の発注となると「契約書形式」が2割未満と更に減少し、初回時に比較して「伝票形式」「メモ程度」「口頭」が増加しています。 発注事業所側からは在宅ワーカー間とのトラブルは「ほとんどない」が81.0%で、トラブル発生は頻繁とは言えません。ただし、発注形態別にみると「たまにある」というのは、仕事毎に選考契約(約3割)、登録型(約2割)で相対的に多い傾向で、発注が恒常・定期的には行われていない形態で発生しやすい傾向であると言えます。 トラブルの内容としては、「仕事の出来具合」「仕事の納期」が多く、これも仕事毎に選考契約、登録型に多くみられます。その他、「報酬の支払」「仕事の量・頻度」もありますが、これは恒常・定期的に発注で多くなっています。 一方、在宅ワーカー側からみると、報酬支払等のトラブルが「ある」とした者が15.2%となっております。 トラブル事例 では、ここで実際にトラブルに遭遇した発注事業所側、在宅ワーカー側の事例を紹介しましょう。 ◎ 在宅ワーカーエージェントU社 (企画制作会社として10年。常勤5名。登録在宅ワーカーは約800名。HP制作、DTP、データ入力、電話によるパソコン指導、BBS管理、システム開発等を在宅ワーカーへ発注している。) 以前、データ入力の仕事を在宅ワーカーへ発注するため、募集を行い、うち20名を選考しました。発注内容(納期、仕事内容、仕様書、支払条件)をメールで送った後、「引き受けます」と在宅ワーカーから合意を得、宅急便で仕事の資料一式を送りました。そのうちの1人が、メールを送っても3日間、まったく応答がなく、業を煮やして電話をしたら、出たのは本人ではなく、夫。「本人は出来ると思っていたらしいが、実際に資料が届いたら自信がなくなったらしい。降ろさせて欲しい」と一言。もし、そうであっても少なくとも本人の口から断るのが礼儀だし、ましてや3日間も放置しておくのは論外。結局、こちらに資料が返送されてきたのは発注から5日も経ってからのこと。仕事の後始末にこちらが振り回される結果になってしまったのは言うに及びません。 エージェントはそういう事態に遭遇しても、全責任を負う覚悟で在宅ワーカーへ仕事を発注しているのです。いくら仕事が欲しいからと言っても実力が伴わない安請け合いは、厳禁。そういう一部の在宅ワーカーが、在宅ワーカー全体の評価を下げかねません。 ◎ 美縞ゆみ子さん (9歳、11歳の女児と夫の4人家族。北九州在住の在宅ライター。各種パソコン雑誌やHP等で定期執筆、書籍の執筆を手がける。) ある在宅ワーカーのエージェントからの仕事を請け負った時に、トラブルに見舞われたことがあります。最初は『10日間で原稿用紙50枚』という発注のはずだったのが、実はそのエージェントと元発注をした企業との間で、『6日で100枚』の約束だったと判明。何とか間に合わせて入稿した後も、結局電話で内容が2転3転。結局、16日間で153枚もの原稿を納品させられた挙句、50枚分の原稿料を半額に、との提示。それでなくとも、その仕事は通常の原稿料の4分の1で、破格の悪条件となってしまいました。それでも粘り強く価格交渉を行った結果、予定金額より3万円ほど値切られた価格に落ち着きましたが、とても悔しい思いをしました。契約書がなかったため、電話での口約束に終始してしまったので、こちらからはノーと言えなかったのです。以降、電話だけでは決して済ませず、メールを使ってこちらからも『発注内容確認書』を送付し、仕事内容、納期、支払額、支払期間を文書化し、手元に残すようにしています。 以上の事例以外にも、在宅ワーカーの「仕事が欲しい」という心理につけこんで、仕事をさせながら報酬を支払わず、連絡先もわからなくなってしまうといった悪徳業者も存在しますので、十分な注意が必要です。 仕事先とのトラブル 在宅ワークのトラブルに関して、まず一番気をつけなければならないのは、報酬の不払ではないでしょうか。では、それを防ぐにはどうしたらいいかを考えてみましょう。 仕事を受注した際、必ず確認しておく事項は、 (1) 報酬金額 単価はいくらか、それは相場を大幅に下回っていないか、休日がはさまれる場合や急ぎの場合は特急料金が上乗せされるのか。 (2) 支払期日 納品した日から何日後に入金されるのか。支払期日は発注事業所によって異なるため必ず確認を。 (3) 支払方法 銀行や郵便局の口座振込みか(その場合は振込み手数料はどちらもちか)、現金支払なのか。 (4) 諸経費の取扱い 仕事にかかる資料の購入費や宅配便代、FDやMO代、打ち合わせの時の交通費、通信費用、仕事に必要な機器、バージョンアップ代はどちら持ちか。 (5) 成果物が不完全であった場合の取扱い 不完全だった箇所について報酬から差し引かれるのか、その引かれる割合はどのくらいなのか。 (6) 納入が遅れた場合の取扱い 遅れた責任をとらされる範囲はどのくらいなのか、報酬から差し引かれるのか、その引かれる割合はどのくらいなのか。 また、納品後、発注事業所からの検品を終え、報酬が支払われる場合は、必ず指定された振込日に入金されたかどうかを確認をしましょう。入金が指定日を過ぎても確認できない場合は、必ず電子メールや電話で連絡を入れましょう。また現金受け取りの場合は、自分で出向いて報酬を回収しに行くケースがほとんどなので、その際は領収書を用意しておくといいでしょう。 在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン 厚生労働省では、1998年7月から、「在宅就労問題研究会」(座長:諏訪康雄法政大学社会学部教授)を開催し、同研究会において在宅ワークに係る実態の把握・分析を行い、2000年3月に本報告が取りまとめられました。 これを受けて、2000年6月に、在宅ワークを安心して行うことができるようにし、紛争が起こることを未然に防止するため、在宅ワークの仕事を注文する者が在宅ワーカーと契約を締結する際に守るべき最低限のルールとして、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」が労働省女性局長名で策定されました。ガイドラインでは、契約条件の明示及びその適正化のために在宅ワーク・モデル契約様式の参考例を示していますので、活用しましょう。在宅ワーカー側から発注事業所へ契約書の交付を求めるのも、有効な手段となります。 トラブル発生時の解決処理方法 業務終了後、発注者との間で、代金の支払をめぐるトラブルが発生することがあります。 このようなトラブルが生じてしまった場合には、内容証明郵便等文書で代金支払を催促し、それでも支払われなければ、裁判手続をとるというのが一般的に考えられる手続です。この場合、30万円以下の金銭請求について少額訴訟制度という簡易で迅速な手続が設定されていますので、この制度を利用してみるのも一つの方法です。 しかし、民事訴訟で判決を得ても相手が任意に支払ってくれなければ、強制執行等の手続きが別途必要になりますし、強制執行しても相手に財産がない場合がなければ、全く回収できない可能性があります。 まずは、契約内容を事前に明確にして後日のトラブルを避けるということが重要であ り、このハンドブックに記載されている「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライ ン」別紙のモデル契約様式も参考にしながら、書面で契約書を交わすことが望まれます。契約書に両当事者の署名押印する際には、契約当事者が法人であるか、個人であるかをはっきりさせることも必要です。 また、発注者との力関係から、書面で契約書を作成してもらえないこともありますが、そのような場合でも契約は有効に成立しています。しかし、契約内容を契約書以外のもので証明しなければいけませんから、相手方からの交渉内容等についてのファックス、Eメールやこちら側の交渉メモを残しておくことが肝心です。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書が、誰から誰に差し出したものかを郵便 局が証明するというものです。 差出人の名前の後に捺印し、枚数が2枚以上になるときは契印も必要です。また、同文 のものを3通作成することが必要になります。 内容証明郵便は、一般の郵便局では受け付けないので、集配郵便局または地方郵便局長の指定した郵便局に行く必要があります。
平成10年1月1日から施行されている新民事訴訟法において設けられた制度で、30万以下の金額の支払に関する事件について、原則として、1回の期日で審理を終え、その日のうちに判決の言渡しまでを行うというものです。 <少額訴訟制度の特徴>
<少額訴訟判決にかかる費用> 勝訴したら、相手側の負担となります。
<少額訴訟制度が利用できない場合> 以下のような場合には、少額訴訟が利用できません。
<少額訴訟をおこす手続き> 相手方の住所地を受け持つ簡易裁判所に対して、訴状に手数料、郵便切手代、証拠書類等を添付して提出します。 簡易裁判所には、トラブルの内容によって、貸金返還請求、売買代金請求、敷金返還請 求、請負代金請求などいくつかのパターンの訴状(訴訟に必要な事項を記載する)の用紙とその記入方法を説明したものが備えられています。
次に通常訴訟制度について、主に少額訴訟制度と比較してその特徴をみてみます。
支払督促 相手の言い分をきかずに、簡易裁判所の裁判所書記官が支払督促を発する手続きです。特徴としては次のとおりです。
民事調停 裁判所の調停委員会の仲介により、相手方との話し合いでトラブルを解決する手続きです。特徴としては次のとおりです。
☆もしトラブルに見舞われたら――― <在宅ワークに関する相談> ・財団法人社会経済生産性本部 TEL: 03-3409-1140 e-mail:soudan@soho-portal.org <関係団体における消費者相談窓口> ・ 財団法人日本消費者協会 TEL: 03-3553-8606 消費生活に関する相談 ・ 社団法人日本訪問販売協会 TEL: 03-3357-6019 訪問販売に関する相談(訪販110番) ・ 社団法人日本通信販売協会(JADMA) TEL: 03-3434-0550 通信販売に関する相談(通販110番) ・ 社団法人日本テレマーケティング協会 TEL: 03-5289-0404 テレマーケティング電話相談室 ・ 社団法人日本クレジット産業協会 TEL: 03-3359-3001 クレジットに関する消費者相談 ・ 社団法人全国信販協会(JAFC) TEL: 03-3258-5260 クレジットに関する相談 ・ 社団法人日本広告審査機構(JARO) TEL: 03-3541-2811 広告についての苦情・問い合わせ
この他にも、各市町村に消費者相談窓口が開設されています。 |
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