基礎知識編・在宅ワークを知る 第1章 在宅ワークとは何か 5 他の働き方との比較 在宅ワークは、通常の企業で働くような出勤勤務の対極にあります。特徴的なこととしては、就業場所、就業時間の拘束が弱まり、「場所を選ばず、都合の良い時間に働ける」ということ。これを一言で表現すると、「働き方の柔軟・弾力化」となります。すなわち、在宅ワークは自宅に居ながらにして、自分や家庭の状況に応じて自ら就業時間を決めることができます。 これに対し、通常、雇用労働者は、オフィスや工場などに出向き、決められた時間内で働きます。最近では、通勤混雑の回避や通勤時間の節約による能率向上、家庭生活との両立といった観点から、企業においてもその雇用する労働者を自宅等で勤務させる形態(在宅勤務等)が出てきているものの、まだまだ例外的といえましょう。 また、情報化の進展は仕事の内容、作業工程そのものも変えてきました。パソコン等情報通信機器を使って行う仕事には、職場で上司の指示を何度も仰がなくてもできるデジタル情報の加工・処理の仕事が多く、また、例えば在宅ワーカー同士が協力しながら行うグループワークにおいても、Eメールの一斉同報機能を使えば、自宅に居ながらにして瞬時に同じ仕事内容を共有できます。 安定的ではない仕事の確保 このように、一見自由に見える在宅ワークですが、現時点では仕事の確保は決して安定的とは言えず、必ずしも自分の計画した通りに働けるわけではありません。在宅ワークは会社員と違い、「仕事がある」状態から始めるのではなく、「仕事を獲得する」こと、すなわち自らが営業していかなければ成り立ちません。また月給や賞与もなく、月によって仕事量や収入もムラがあります。 JIL調査によると、仕事が「継続的にある」としているのは、45.6%に止まり、「途切れる時がある」という人は41.5%となっています。在宅ワーカーの年収は、100万円未満が44.4%、100〜149万円が12.6%となっている一方、500万円以上も18.7%となっています。 就労時間は、週40時間未満が71.9%、週40〜49時間が14.1%、週50時間以上が12.2%となっています。また、女性の場合は82.2%が週40時間未満であり、男性では週40時間以上が51.9%、50時間以上も25.3%となっています(図6)。
報酬は「出来高」、単価設定は発注事業者がイニシアティブをもつ 次に報酬の面から見てみると、在宅ワークは請負形態であるため、報酬は「出来高」とする場合が多く、75.5%を占めています。現在のところ、単価設定のイニシアティブは発注者側がもっている割合が高く(「会社側で設定」21.8%、「会社側が設定し、必要があれば調整」45.8%)、この際重視されるのは「仕事の難易度」「在宅ワーカーの実績、能力」「同業者の地域相場」などです。 在宅ワーカーの認識(複数回答)としては、60.4%が単価を「発注者が設定」していると答えており、次いで「発注者が設定し、必要があれば交渉する」が27.8%、「自分で提示し、発注者と交渉する」が17.4%で、「発注者が設定」が大半を占めています。 では、報酬設定に関する在宅ワーカーの声を聞いてみましょう。 ◎金森尚美さん ( 42歳。6歳、10歳、12歳男児、夫と5人家族。千葉県松戸市在住。在宅ワーカー歴8年) 「私が在宅ワークを始めた頃は、マシンやソフトがかなり高額だったため、個人で揃えること自体が珍しいことでした。そのため、単純なデータ入力も今より単価設定がかなり高く、5〜6倍の報酬だったと記憶しています。しかしながら、現在ではマシンやソフトがかなり安く手に入り、ハードルが低くなった分、『いくらでも請け負います』という人で溢れかえってしまいました。間口が広がったことは良いことだと思いますが、在宅ワーカー自身の意識の低下が報酬を下げているのではないでしょうか。」 ◎ホームオフィスナビ談話室より 「在宅ワーカーの仕事は『YMO』と言われているんです。要は『安い、面倒くさい、大急ぎ』。仕事も週末に依頼がきて、翌週早々納品するなんてザラです。相手の言うがままに予算や納期に合わせて仕上げる。でも仕事を打ち切られるのが怖いから、どんな条件でも受けてしまうのが本音です。」 このように相手の予算に合わせてしまうケースが多いようです。在宅ワーカーが発注先に能力をアピールしたり、報酬設定の交渉力をもつことが、今後の課題と言えます。 初期投資は職種によって異なる 初期費用は選択する職種によって、まったく異なります。もっとも手軽に済むのは文章のベタ入力と言われる領域で、エディット(編集用)ソフトやワープロソフトさえあれば行うことができます。これらは最初からパソコンに組み込まれている場合が多く、また、無料配布の*フリーウエアや廉価な使用料で済む*シェアウエアでもありますので、ほとんど初期投資はかかりません。また、パソコンの処理能力もさほど高くなくても対応できるので、ハードも高額なものを購入する必要はありません。 それに対して、専門性が必要とされる職域では、ある程度の初期投資が必要です。例えばDTPを行う場合、専門の編集ソフトは1つが10万円以上。複数のソフトが必要です。また、ハードも処理能力が高いものが必要とされるため、ある程度高価なものが必要となります。 生活とのバランスを図る 会社勤務では決められた時間内に決められた仕事を仕上げ、いわば会社内で「プロセスが見える仕事」ですが、在宅ワークは前述のとおり、請負形態であり成果物を納品してはじめて仕事が完結するという、発注者からは「プロセスがまったく見えない(または重視されない)働き方」であるとも言えます。それだけにたとえ徹夜で仕上げようとも、発注者には理解されません。逆を言えば、昼間、買い物に出ようが、映画を見ようが発注者の管理するところではないのです。生活の中で仕事を組み立てて行くのは、すべて自分の裁量に委ねられています。ですから、まずは自分の生活の中でどのくらいの時間でどの時間帯を仕事に割けるかを見極める必要があるでしょう。 例えば生まれたばかりの乳児を抱えて働く人と小学生の子どもをもつ人では、仕事に割ける時間や時間帯がまったく違います。3時間おきの授乳の合間を割いて生み出す時間と、小学校に通っている間にできる一人の時間では、まったく質も疲労度も異なることでしょう。 そして忘れていけないのは、家族の理解と協力を得ること。家事も仕事も育児も、そして介護もと何もかも自分で引き受けてしまうのは、大変なことです。在宅ワークは「自宅にオフィスを持ちこむ」ようなもの。それだけに周囲の理解と協力は欠かせません。 ◎田松康子さん (40歳。9歳女児、夫と3人家族。千葉県習志野市在住。在宅ワーカー歴3年) 「外で仕事をしているから家にいない、というのと家にいるのに背中を向けているのとでは子どもにとってのストレスはまったくの別物です。子どもに言われてハッとしたのは、『またパソコンのお部屋に行っちゃうの。一緒にテレビ見ようよ』という一言でした。子どものために家にいたいからと始めたつもりの在宅ワークなのに、逆に子どもに負担をかけてしまっているんですね。以来、忙しくて例え出前のピザで食事を済ませようと、その時間は子どもの目をみて、きちんと話を聞くよう心がけています。」 ◎ホームオフィスナビ談話室より 1997年1月よりスタートしたPanasonic Hi-HOの在宅ワーカー向け掲示板で、20代、30代の育児期の主婦が中心に発言をしている。掲示板のリーダーも元システムエンジニアの子育て中の主婦である。 http://kurashi.hi-ho.ne.jp/work/ |
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