在宅ワークの適正な実施のための
ガイドライン
 


平成12年6月14日付けで厚生労働省雇用均等・児童家庭局長から出されたガイドラインを紹介します。




在宅ワークの適正な実施のための
ガイドライン
解  説
第1 趣旨

 このガイドラインは、在宅ワークを安心して行うことができるようにし、かつ、後に紛争が起こることを未然に防止するため、在宅ワークの契約条件の文書明示や契約条件の適正化などについて必要な事項を示すものである。在宅ワークの仕事を注文する者は、契約を締結する際には、在宅ワーカーと協議した上で契約の内容を決定するとともに、第3に示す内容を守っていくことが求められる。


第2 定義

 このガイドラインにおける以下の用語の意味は、それぞれに定めるところによる。


(1) 在宅ワーク

 情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うことが容易なものをいい、例えば文章入力、テープ起こし、データ入力、ホームページ作成などの作業を行うものがこれに該当する場合が多い。ただし、法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などを除く。

* 情報通信機器を活用して在宅形態で自営的に行われる働き方のうち、請負的にサービスの提供を行うもの等を「在宅ワーク」といいます。
 在宅ワークには多種多様なものがありますが、ガイドラインの適用対象となる在宅ワークとは、その中でも保護の必要性の高いと考えられる、事業者性が弱く従属性の強いもの、すなわち、「情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うことが容易なもの」です。
 これは、在宅ワーカーによって提供される成果物の内容や価値が在宅ワーカーごとに大きく異なることがない、仕事における裁量性の余地が少ない在宅ワークを適用対象にするという趣旨です。

* 在宅ワークの具体例として文章入力、テープ起こし、データ入力、ホームページ作成などの作業を行うものが該当する場合が多いことを示しています。

<具体例>
・文章入力・・・・・・手書き原稿等のワープロ入力等の作業
・テープ起こし・・・・講演、座談会等の録音テープの内容のワープロ入力等の作業
・データ入力・・・・・各種調査票等の氏名、住所、調査内容等の各種データの入力作業
・ホームページ作成・・HTML(ハイパーテキスト記述言語)を用いてホームページを作成する作業

* 法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などは、専業性、独立性の高い自営業的な形態といえるので、ガイドラインの適用対象とはなりません。

* なお、フロッピーディスク等の提供又は受渡しを受けて、原稿を当該フロッピーディスク等に入力し、それを納入する場合、家内労働法上の「家内労働」に該当しますので、このガイドラインの適用対象とはなりません。

(2) 在宅ワーカー

 在宅ワークを行う者をいう。


(3) 注文者

 在宅ワークの仕事を在宅ワーカーに注文する者をいう。

* 自らの仕事を注文する者だけでなく、他者から仕事を請け負い、これを個々の在宅ワーカーに注文する者も当然含まれます。

第3 注文者が守っていくべき事項


(1) 契約条件の文書明示及びその保存

イ 契約条件の文書明示



 注文者は、在宅ワーカーと在宅ワークの契約を締結するときには、在宅ワーカーと協議の上、在宅ワーカーに対して、次のからの事項を明らかにした文書を交付すること。
 ただし、契約関係が一定期間継続し、受発注が繰り返されるような場合、各回の受発注に共通する事項を包括的な契約とし、納期等各回の個別の事項をその都度の契約内容として、それぞれ明示することも可能であること。

* 契約後に疑義を生じ、トラブルが発生することのないよう、注文者は在宅ワーカーと話し合ったうえで、左記からの基本的な事項について文書で明示しましょう。

 注文者の氏名、所在地、連絡先

* 注文者が特定でき、確実に連絡が取れるよう明確にしておきましょう。

 注文年月日


 注文した仕事の内容

* 仕事の内容について、双方に思い違い、誤解があることが、報酬の支払等へのトラブルにつながりがちですので、内容が明確に分かるように注意しましょう。

 報酬額、報酬の支払期日、支払方法

* 報酬の支払等に関するトラブルが少なくないので、明確にしましょう。

 注文した仕事にかかる諸経費の取扱い

* 通信費、宅配料金等仕事にかかる経費において、注文者が負担する経費がある場合には、あらかじめその範囲を明確にしましょう。

 成果物の納期、納品先、納品方法

* 報酬の支払期日は納品日から起算して○日以内とされる場合も多いので、確実に成果物が納品されることが重要です。納品先を明確にしておきましょう。

 成果物が不完全であった場合やその納入が遅れた場合の取扱い(補修が求められる場合の取扱いなど)

 なお、文書を交付する際には、別紙のモデル契約様式の活用が望ましい。

* 成果物が不完全であった場合や在宅ワーカーの責任により納期が遅れた場合の取扱いについて、在宅ワーカーの責任を含めあらかじめ明確にしておきましょう。
* 契約条件の文書を交付する際には、左記の項目をモデル的に契約文書の形で示したモデル契約様式を活用しましょう。

ロ 契約条件の文書保存

 注文者は、在宅ワーカーとの契約条件をめぐる紛争を防止するため、上記イの事項を記載した文書を3年間保存すること。


ハ 電子メールによる明示
 上記イのからの事項は、文書の交付に代えて電子メールにより明示してもよい。ただし、その場合でも、在宅ワーカーから文書の交付を求められたときは、速やかに文書をその在宅ワーカーに交付すること。

 
* 在宅ワークは情報通信機器を活用した働き方であり、電子メールでのやり取りが一般的に行われていることから、電子メールによる契約条件の明示も差し支えないとしたものですが、在宅ワーカーから文書の交付を求められたときは、速やかに文書を交付する必要があります。

(2) 契約条件の適正化

イ 報酬の支払


 報酬の支払期日

 報酬の支払期日については、注文者が在宅ワーカーから成果物を受け取った日から起算して30日以内とし、長くても60日以内とすること。


 報酬の額

 報酬の額については、同一又は類似の業務に従事する在宅ワーカーの報酬、注文した仕事の難易度、納期の長短、在宅ワーカーの能力等を考慮することにより、在宅ワーカーの適正な利益の確保が可能となるように決定すること。
 なお、報酬の額については、最低賃金を参考にすることも考えられる。

* 最低賃金とは、最低賃金法による最低賃金、つまり地域別最低賃金及び産業別最低賃金を意味します。
* 在宅ワーカーの報酬と最低賃金とを比較する際には、標準的な在宅ワーカーの時間当たりの作業量から想定される時間当たり報酬額 をもとに比較するという方法が考えられます。

ロ 納期

 納期については、在宅ワーカーの作業時間が長時間に及ばないように設定すること。その際には、通常の労働者の1日の労働時間(8時間)を目安とすること。

* 「通常の労働者の1日の労働時間(8時間)を目安とする」とは、仕事の納期を定めるに当たって、通常の雇用労働者の1日の所定内労働時間の上限である8時間を在宅ワーカーの作業時間の上限の目安とするという趣旨です。
 8時間を目安として納期を設定する際には、標準的な在宅ワーカーの時間当たりの作業量から想定される、発注した仕事に必要な作業時間数をもとに設定するという方法が考えられます。

ハ 継続的な注文の打切りの場合における事前予告

 同じ在宅ワーカーに、例えば6月を超えて毎月1回以上在宅ワークの仕事を注文しているなど継続的な取引関係にある注文者は、在宅ワーカーへの注文を打ち切ろうとするときは、速やかに、その旨及びその理由を予告すること。

* 継続的に同一の注文者から仕事を得ている在宅ワーカーにおいては、仕事が突然打ち切られると生活設計の変更を余儀なくされることがありますので、その影響をできるだけ小さくするため早めに予告するという趣旨です。
* 打ち切る理由としては、例えば、注文者が「業務量を縮小したため」や在宅ワーカーが「納期を守らないため」、「仕事の出来具合に問題があるため」などが考えられるでしょうが、いずれにしろ、その理由を在宅ワーカーに明確にすることが必要です。

ニ その他

 成果物が不完全であったことやその納入が遅れたことにより損害が生じた場合に、上記(1)のイに基づきあらかじめ契約書において在宅ワーカーが負担すると決めている範囲を超えて責任を負わせないようにすること。

* 成果物が不完全であった場合や納期が遅れた場合の取扱いについては、このガイドラインにおいて文書明示すべき事項としていますが、そのような場合で損害が生じたときに、あらかじめ契約に定められている範囲を超えて在宅ワーカーに責任を負わせないようにしましょう。

(3) その他

イ 個人情報の保護


 注文者は、業務上知り得た在宅ワーカーの個人情報について、本人の同意なく無断で、目的外の使用、第三者への提供その他漏洩行為を行わないこと。


ロ 健康確保措置

 VDT作業(注)の適正な実施方法、腰痛防止策などの健康を確保するための手法について、注文者が在宅ワーカーに情報提供することが望ましいこと。

 
* 眼精疲労、腰痛等を感じる在宅ワーカーが多く、特にVDT作業対策や腰痛の防止対策が重要です。注文者は、VDT作業の適正な実施方法、腰痛防止対策などの健康を確保するための方法について情報提供を行うことが望まれます。

ハ 能力開発機会の付与

 注文者は、在宅ワーカーの能力の維持向上を図ることを目的として必要な能力開発機会を付与することが望ましいこと。
 
* 注文者側から、仕事の出来具合の個人差が大きいという指摘があるものの、在宅ワーカーは能力開発を受ける機会が少ない状況にあります。在宅ワークの健全な発展のためにも在宅ワーカーに対して必要な能力開発の機会を付与することが望まれます。
* この「必要な能力開発機会を付与する」には、在宅ワーカーに必要と思われる能力開発機会について情報提供をすることも含まれます。

ニ 担当者の明確化

 注文者は、あらかじめ、在宅ワーカーから問い合わせや苦情等があった場合にそれを受け付ける担当者を明らかにすることが望ましいこと。

 
* 在宅ワーカーが作業を進めているときに、問い合わせや苦情を申し出たい場合が生じた際にすぐに連絡できるようにしておくことが、問題の早期発見、トラブル防止に役立ちます。注文者は、それを受け付ける窓口となる担当者の氏名、連絡先をあらかじめ、在宅ワーカーに明らかにすることが望まれます。

(注) VDT作業とは、CRT(ブラウン管や液晶)ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器を使用して、データ入力・検索・照合等、文書の作成・編集・修正、プログラミング等を行う作業をいう(昭和60年12月労働省「VDT作業のための労働衛生上の指針」(参考)参照)。

* 労働省では、昭和60年12月に「VDT作業のための労働衛生上の指針」を策定し、VDT作業における労働衛生管理等に関する事業場での自主的対策を示しています。





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