SOHO受発注トラブル事例集


第3章 自らの強みを単体で生かしている場合
不払いへの対応


プロフィール

デザイナー。雑誌やパンフレットなどの制作が主体。場合によっては企画から、写真撮影・原稿執筆・編集までをこなす。SOHO歴は約8年で、年収は600万円。

 あるエージェントから、企画コンペに出品するための広告のデザインを発注された。コンペに参加するにあたって、報酬面に関しては「支払いますが、金額に関してはまだ確定してません」という話があった。何度か仕事をしているエージェントだった。

 そこで、指定された納期どおりに納品し、コンペの結果を待っていた。とりあえずコンペを勝ち取るのが最優先、と理解し、まずは納品することに注力した。その後、報酬面の話を具体的に始めようと思っていた。ところが、コンペの開催日から数日してもエージェントから連絡がこない。心配になって電話をしたところ、「コンペ自体が中止になった」との返事。とはいえ、コンペのためにデザインをしたことは事実なのだから、制作料は請求できると思い、「デザインの制作料はどうなるのでしょうか」と聞いたところ、「コンペ自体がなくなったので、制作料は払えません、すみませんが」と言われた。

 考えてみると、極端な話、そのコンペがあったかどうかも分からない。例えば、その後、私の作品がエージェントによって、流用されてしまう恐れもある。それが発覚しても、エージェントから「これはうちで作りました。偶然似ていたんですよ」といわれたら、自分としては手の打ちようがない。コンペ用のデザイン制作料について、事前に確認しておけばよかった、と反省している。しかしコンペに通るかどうかもわからないのに、その段階で、報酬面の話をとやかく持ち出すのもどうかと思っていた。

 独立当初はなるべく書類で、少なくとも見積書等は交わすようにしていたが、現実はどうかというと、口約束がほとんど。デザインの現場には割とこのようなケースが多い。他の案件でも、通常の受発注において、受注量が最初の発注内容に加えて、後付けで倍になっても、報酬は据え置きされるなど、不当な仕事量の上乗せや、事実上の単価の不当な引き下げを経験した。

 このような経験から、やはり受発注のしかるべきタイミングで、確認すべき点は落とさないようにすることが重要だと思えてきた。だからなるべく、メールを交わして受発注内容を残すようにしている。

 契約書自体を書きたがらないところも少なくない。「うちは書かないから」とはっきり言われることもあるが、契約を渋るようなところからは仕事を請けないようにしている。また、流用を防ぐためには、契約書にそのことを明記したりニ次使用についても話し合うようにして、そういったことにうるさいデザイナーである、という認識を持たせるようにしている。また、トラブル回避という点でもエージェントが仲介に入っている案件でもエージェント任せにせず、可能な限りクライアントとの打ち合わせや説明会などに同席することを心掛けている。